【保存版】相続税の計算方法|不動産がある場合の評価と税額シミュレーション

相続が発生したとき、「相続税はいくらになるの?」と不安に感じる方は多いでしょう。特に遺産に自宅や土地などの不動産が含まれる場合、現金と違ってすぐに金額が分からず、計算方法に悩むケースが少なくありません。

この記事では、相続税の基本から不動産評価の実例、節税につながる特例まで、税理士と相談者の対話形式でわかりやすく解説します。


登場人物

  • 👩‍🦰 相談者:佐藤さん(50代・主婦)
    「父が亡くなって実家を相続することになりました。相続税ってどれくらいになるんでしょうか…?」
  • 👨‍💼 税理士:河合
    「不動産のある相続では、評価の仕方ひとつで税額が大きく変わります。順を追って一緒に見ていきましょう。」

相続税の基本的な仕組みを理解しよう

佐藤さん: 相続税って、どんな人にかかるんですか?うちにも払わないといけないんでしょうか?

河合税理士: 相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を受け取った方に課される税金です。ただし、全員が対象になるわけではなく、基礎控除額を超えた場合にだけ、課税されます。

基礎控除額の計算式:
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、配偶者と子ども2人の3人が相続人の場合:

3,000万円+600万円×3=4,800万円

遺産総額が4,800万円を超えなければ、相続税はかかりません。

相続税計算の基本ステップ

  1. 相続財産の総額を集計(不動産・預金など)
  2. 借入金や葬儀費用を差し引く
  3. 基礎控除額を引く
  4. 残額を相続人の取得分に分けて税率をかける
  5. 各種控除(配偶者控除など)を差し引く

河合税理士: このうち一番ややこしいのが“不動産の評価”です。次に詳しく見ていきましょう。


不動産がある場合の相続税計算の流れ

佐藤さん: 土地とか建物って、どうやって「いくら」って決めるんですか?

河合: 不動産の評価は、国税庁が定める「相続税評価額」で行います。主に路線価方式倍率方式の2つがあります。

ステップ内容参考資料
土地・建物の所在・面積を確認登記簿謄本・課税明細書
評価方法を決める(路線価方式 or 倍率方式)国税庁「路線価図」
評価額を算出(㎡単価×地積)路線価または倍率表
各種補正率を適用(奥行・間口・形状など)評価倍率表
小規模宅地等の特例を確認要件を満たす場合は減額

佐藤さん: うちの実家は駅から徒歩5分の住宅街ですが、これは路線価方式ですか?

河合: はい。都市部や住宅街の多くは路線価方式です。地方や農村部などで路線価が設定されていない場合は倍率方式になります。


土地・建物の評価方法(路線価方式・倍率方式)

佐藤さん: 路線価方式って、どうやって調べるんですか?

河合税理士: 国税庁の「路線価図」で住所を入力すればすぐに確認できます。たとえば「300C」と表示されていれば、1㎡あたり30万円という意味です。

➡ 例:100㎡の土地 → 30万円 × 100㎡ = 3,000万円

佐藤さん: 倍率方式はどう違うんですか?

河合: 路線価がない地域では「固定資産税評価額 × 評価倍率」で計算します。たとえば評価額1,000万円で倍率1.1倍なら、1,100万円が評価額です。

建物の評価方法

建物は「固定資産税評価額」をそのまま使用します。築年数が古い家屋は評価が低くなるため、比較的有利になる場合もあります。


【具体例】不動産を含む相続税の計算シミュレーション

佐藤さん: 実際にどれくらい税金がかかるのか知りたいです。

河合: では、次の条件でシミュレーションしてみましょう。

項目内容
被相続人お父さま
相続人お母さま・佐藤さん・弟さん(3人)
財産自宅土地100㎡(路線価300,000円/㎡)、建物評価1,200万円、預金1,000万円
債務・葬儀費用300万円

計算手順

  1. 土地評価:300,000円 × 100㎡ = 3,000万円
  2. 建物評価:1,200万円
  3. 預金:1,000万円
  4. 合計:5,200万円
  5. 債務控除:5,200万円 − 300万円 = 4,900万円
  6. 基礎控除:4,800万円 → 課税対象額 100万円

相続税率10% × 100万円 = 相続税総額10万円

妻:5万円/子ども2人:各2.5万円

佐藤さん: 思っていたより少ないですね。でも、「小規模宅地等の特例」ってよく聞きますが?

河合: その特例を使えば、自宅の土地評価を最大80%減額できます。

3,000万円 × (1−0.8) = 600万円
評価を下げることで、課税対象から外れるケースも多く、結果的に相続税ゼロ・申告不要になることもあります。


河合税理士まとめ

  • 相続税はまず基礎控除額を超えるか確認する
  • 不動産の評価は「路線価方式」か「倍率方式」で算出
  • 「小規模宅地等の特例」を活用すれば大幅な節税が可能